唐突ですが、子供のころは、夏休みがむやみに長く感じられませんでしたか?
休みが永遠に続くような、二度と日常が帰ってこないかのような、あのけだるい感覚。
この感覚で思い出すのはやはり「マイト・アンド・マジック」です。パソコンのそばに菓子を持ち込んで、
日がな一日プレイする感覚は、「永遠の夏休み」の甘美だが不健康なノリに近いものがあります。
実際夏休みによくプレイしていたような気もしますが。
スタークラフトはこのようなアメリカ製の、クリアするのにべらぼうに時間のかかる大作RPGをPC-88や98に
移植していた会社です。Apple2の荒いグラフィックを手直しするセンスもよく、ゲーム業界の良心のように思っていました。
Might and Magicシリーズのほかに、Ultimaも3まではここで出していたように思いますし、その種のゲームがたくさんありました。
アメリカ製ゲームのすごいボリュームの背景には、いいゲームにはできればずうっと終わってほしくない
という欲望が働いていたのだと思います。アメリカRPGには世界設定のリアリティにこだわるような気風があったために、
余計に「魅力的な異世界にいつまでも浸っていたい」という欲求をかきたてたものです。
しかし、私たちも年齢を重ねるに連れて、「ながい休み」にはだんだんと耐えられない体になって行くようです。
これも日本人の宿命なのかも知れませんが、休みはなんだか人を不安にします。「永遠の夏休み」は楽園ではなく、
実は牢獄だったのです。それに呼応するかのように、私も超大作ゲームで徹夜した次の日は、
むなしい気持ちになるようになりました。
なぜ、長時間別世界型のゲームは消えて行ったのでしょうか?
流行の移り変わりの背後には、何があったのか?
スタークラフトと関係なくなるんですけど、Ultima VIでは主人公がブリタニアの生活が忘れられず、
こっちの世界になじめなくなって、もんもんとしているというくだりがあって、そんなちょっと切なすぎるじゃんと思っていたら
最近主人公はあっちの世界に行ったきり帰れなくになっているそうで、どうしたもんだかと思います。
まあこのシリーズは長時間プレイしてもむなしくならないめずらしいゲームですが。
M&Mのシリーズも終わると、スタークラフトはぱっとしなくなりましたね。
単にスタッフを引き抜かれたとかそういう事なのかも知れませんが、私にはゲーム業界も大人になって、
「永遠の夏休み」の甘い記憶だけが残ったように思われたもんです。